コペルくん的読書日記

誰かと本の感想を語り合いたい寂しめなコペルくんです

竜馬がゆく(三)(司馬遼太郎、1998)★★★★★ー0007

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もう土佐には帰りません。天下を棲家として暮らします。

 幕末の奇蹟といわれた風雲児坂本竜馬の劇的な生涯を中心に、同じ時代をひたむきに生きた若者たちを描いていた青春群青、昨日に引き続き第三巻です。

コメント

 今日も同様に「かっこよく生きるためにはどうすればいい?」というヒントを探すべく読みました。だんだんと内容が重複するようになり、なるほどやはり覚悟の美学こそ自分がかっこいいと感ずるポイントなのだと思うようになってきました。

 一方で、この竜馬には「成し遂げるという覚悟」以外にも不思議な魅力を持っております。なぜか相手とすぐ打ち解けてしまうという「人懐こさ」を持っているのです。もちろんこれは心の芯にその覚悟があるからかと思われますが、今回(あるいは次回以降も続けて)その魅力について考えてみたいと思います。

①大事をなすためには人間への愛情が必要
②まず相手を心底受け入れるように努める
③そして徳を以って接する

 

①大事をなすためには人間への愛情が必要

竜馬はこの清河が好きではなかった。たったひとつ、人間への愛情が足りない。万能があるくせに。そうみている。ついに大事をなせぬ男だ、と竜馬はみていた。

 江戸の千葉道場で同門の士である清河への竜馬の評価です。これを言い換えると、竜馬は大事をなすためには人間への愛情が必要だという価値観をもっていると言えます。もちろん生まれ持った気質も大きいですが、竜馬自身こういう「人との距離感・関係性」を意図的に築いていきます。結果、皆、竜馬の虜になってしまうのです。

 

②まず相手を心底受け入れるように努める

「重さん、良薬ほど毒性があるよ。英雄というのは国家の無病息災なときには無用の毒物だが、天下危難のときにはなくてはならぬ妙薬だ。人間の毒性ばかりをこせこせと見るのは小人のすることで、大人はすべからく相手の効能の面を見抜かねばならん」

 この英雄とは勝海舟のことです。そしてこのセリフは、勝海舟を殺そうとしている重太郎に向けて竜馬が言った一言です。重太郎の視野の狭さを表現し、本質を考えさせるというセリフでもあるのですが、同時にこれから竜馬の人当たりの良さの根源が透けているようにも思えます。端的に言えば、人のいいところを見ようという態度のことです。竜馬のすごいところは、これが当時ほぼ100%の人間に嫌われていた「開国主義」を唱える勝海舟までにもそれを適用したということです。おそらく全ての人と接する際、まずこの良薬の側面を考えているのではないかと思います。(とはいえ、清河のように、結果的に嫌うということも多いです。笑)

 

③そして徳を以って接する

もともと以蔵は無口な男だ。しかし、顔をくしゃくしゃに笑み崩して、竜馬を見上げている。以蔵にすれば、(あなたを兄のように慕っています)といいたいところだろう。

実のところ、以蔵のような無学者にとっては、師匠の武市半平太はちがづきにくい存在であった。それよりも、以蔵は、師匠の友人の竜馬の方が、親しみをもてる。もてるどころか、かつて大阪高麗橋で竜馬から受けた大恩は忘れがたい。(そのくせ、あのひとは恩人づらをしなさらん。)それがうれしい。

以蔵は、身分、足軽だった。土佐藩では足軽は他藩以上にいやしめられた(略)藩の同志たちも、いや武市半平太でさえもときに、「足軽」といった眼で以蔵を見る。以蔵にはそれが敏感にわかるのだ。(ところが、坂本さんだけはそれをしなさらん。)

 この以蔵とは「人斬り以蔵」とも呼ばれ、京洛を戦慄させている暗殺の名人です。竜馬の虜の一人で、竜馬の人間性にぐっと心を掴まれていることがわかると思います。

 このように人として相手を好きになり、その人には徳を以って接することが人間関係をうまくやっていく秘訣なのではと思われます。とはいえ、これはまだあくまで仮説ですので、実生活で検証してみて、その結果報告みたいなものもいつかのブログでやってみたいと思います。

 ここで具体的に実践にうつそうな学びポイントは3つ程、今後の自分のためにメモしておきます。

・学(論理)を振りかざすと敬遠される
・見返りを求めず恩を売ること
・差別をしない、偏見で人をみない

 

竜馬がゆく〈3〉 (文春文庫)

竜馬がゆく〈3〉 (文春文庫)