コペルくん的読書日記

誰かと本の感想を語り合いたい寂しめなコペルくんです

知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ(苅谷剛彦、2002)★★★★★ー0001

「他者を批判するとき、人は簡単に、自分を善玉の側に置く。ところが、そうした区別自体が、どういうからくりで出来上がっているのか、区別自体を生み出す線引きのしかたが、どういう文脈から生まれてきたのか、その線引き自体にはどういった意味があるのか、といったことには目が向かない。(略)両者を善玉悪玉で区別できるほど事態は単純ではない。(略)そういうことがわかっていながら、白黒どちらかの側に身を置いて問題をみてしまう私たちは、いったい自分の頭で考えているのだろうか。」 

 15万人の大学生からの投票でベスト・ティーチャーとして選ばれた苅谷教授(オックスフォード大学)による、「考える力」をつけるための教科書です。
 知的複眼思考法とは、ありきたりの常識や紋切り型の決まり文句(つまり「ステレオタイプ」)にとらわれずに、自身の視点からものごとをとらえ、考えていくための方法のことです。ステレオタイプを鵜呑みにせずに、自分との関わりの中でそれがどういう意味を持つのかを相対化し、多面的にとらえ直してみることで、自分なりの対応・行動を決めていく。その具体的な方法が、豊富な事例とともに順を追ってわかりやすく解説されています。

==コメント==

 当初本書を読んだ目的は、読書の効率を高めるための方法論を得るためでした。しかし思いがけないことに、ドンピシャで今の私に必要な内容だと感じたので、読書に限らず目的を拡大して「常識にとらわれ、思考停止に陥ってしまうことを防ぐためには何を意識すべきか」と再設定しました。もう一度じっくり読み返したい本です。
 その成果として以下に自分用のまとめの特に大事だと思う部分を列挙します。

■本書により、常識にとらわれ思考停止に陥ってしまうことを防ぐことができる
①情報を批判的に・的確に読み取ることができるようになる(当初の目的)
②様々な視点でものごとを捉えることができるようになる
③素朴な疑問を自分で問いに仕立てて、論理的に展開し深めていくことができる

■具体的に何を意識すべきか
□情報を批判的に読み取る
・著者を簡単には信用しない
・著者の狙いをつかむ
・論理を丹念に追う、根拠を疑う
・著者の前提を探り出し、疑う

□様々な視点でものごとを捉え、疑問を問いに仕立て、論理的に展開する
・「なぜ」と「どうなっているか」の組み合わせで問いを小さく砕く
・ケースと概念のレベルを使い分けて問いを展開する
・関係論的にものごとの二面性・多面性を捉える
・ものごとの裏面や逆説的な関係に注目する
・「問題を問うこと」を問う

□頭の中で考えるのではなく書く
・書くことで思考が視覚化され、思考を深めることができる(だから書評ブログを始めました)。

 

知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+α文庫)

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